Ⅳ 突然死の予防

 突然死(=不整脈死)の予防編の構成は以下のとおりである.

 まず,突然死が発症することが知られている主な病態または疾患について概説して,不整脈死とのかかわりについて述べた.次いで各病態または疾患に
おいて,突然死の危険が高いとみなされている症状や検査所見を予知因子としてとらえて記述し,それらの症状や所見に対応する治療手段を列記した.
その際,目的が不整脈死の二次予防か一次予防に分けて記載した.

 治療手段の選択と適応はクラス別に記載した11),230)

 クラスの意味は,

クラスⅠ: その治療が適応となることについて見解が一致しているもの
クラスⅡa: やや議論があるものの,どちらかといえば積極的な適応があるもの
クラスⅡb: やや議論があるものの,どちらかといえば消極的な適応があるもの
クラスⅢ:有用性が否定的で適応とならないもの

である.ここではクラスⅢの記述は省略した.

 本ガイドラインでは,例えばクラスⅠとして,ICDと抗不整脈薬が併記されている場合がある.この場合,両者が対等の予防効果を示すというのではなく,
クラスⅠとした薬剤は対照群に比べれば,全体として不整脈死を減少させるというエビデンスが得られている,またはそのように考えられていることを意味す
る.運動誘発性不整脈では,運動制限もクラスⅠとなっている.複数の治療法がこのように同じクラスに列記されているが,それぞれの治療目標が異なって
おり,いずれかを選択すればよいというものではない点に留意していただきたい.
1 不整脈 2 心原性失神 3 心不全 4 虚血性心臓病 5 肥大型心筋症(HCM) 6 心肥大を伴うその他の心疾患 7 拡張型心筋症(DCM) 8 催不整脈性右室心筋症(ARVC) 9 その他の心筋疾患 10 Brugada症候群 11 先天性QT 延長症候群(LQTS) 12 Wolff-Parkinson-White症候群(WPW症候群) 13 カテコラミン誘発性多形性心室頻拍(CPVT) 14 その他の不整脈 15 心臓弁膜症
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心臓突然死の予知と予防法のガイドライン(2010年改訂版)
Guidelines for Risks and Prevention of Sudden Cardiac Death(JCS 2010)