治療目的/所見クラスⅠ クラスⅡa クラスⅡb
二次予防
 ◦VF,心停止または失神カテーテルアブレーション
一次予防
 ◦心房細動時の最短RR間隔≦250msec カテーテルアブレーション
アミオダロン
Ia・Ic 薬
 ◦副伝導路の順行性不応期≦270msec または複数副伝導路または突然死の家族歴または運動選手
カテーテルアブレーション
12 Wolff-Parkinson-White症候群(WPW症候群)
 顕性WPW症候群は1 ~ 2人/1000人,突然死発症率は0.02~ 0.15% /年,心室細動の発症率はその3~ 4倍程度と報告されている444)-446).WPW症候群全体からみると突然死や心室細動の出現率は低いと推定されている.本症の診断は心電図で確定する.無症候性に経過していても,初めての心房細動時に心室細動に移行する例がまれに存在する.本症は,カテーテルアブレーションにより根治し,突然死の危険も消失する点が特徴である11),230),447).突然死の危険は,臨床像,心電図所見および電気生理検査によって評価される.

 心房細動や回帰頻拍の既往例では心室細動の危険が高く154),448),男性でかつ若年者に発生しやすい154),448),449).心室細動や突然死例では7割以上に心房細動が認められ,初回の心房細動発作で約半数が心室細動へ移行するとの報告がある154),449).心房細動が誘発された無症候性WPW症候群の約3 年の経過で,8例中3例に心室細動または突然死が発生したという報告がある448)

 複数のケント束を有する例では20~ 40%に心室細動が発症するとされる448).Ebstein奇形の合併は突然死の危険因子と考えられているが,その理由の1つに複数副伝導路の合併が挙げられる.失神と突然死との関連は必ずしも明確ではない154),450)

 一過性にデルタ波が消失する間欠性WPW症候群では,心室細動のリスクは低い.また,アジマリンやプロカインアミドの静注によってデルタ波が消失する場合も低危険群とされる451),452)

 電気生理検査で副伝導路の順行性不応期≦ 270msecで,誘発された心房細動中の最短RR間隔が250msec以下の例は,心室細動に移行するリスクは高いが151)-154),特異度や陽性予測値は低い448),450).複数副伝導路の存在は電気生理検査で確認できる.カテーテルアブレーションが第一選択の治療法で,根治が望める11),230),447)(表13)
表13 WPW症候群における突然死予防
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心臓突然死の予知と予防法のガイドライン(2010年改訂版)
Guidelines for Risks and Prevention of Sudden Cardiac Death(JCS 2010)