カテコラミン誘発性多形性心室頻拍は主に幼児期以後の小児期に発症し,運動により多形性心室頻拍や心室細動が誘発される180),453)-455).
器質的心疾患は認められず,発生頻度に性差はない.発症好発年齢は7~10歳である.安静時は比較的徐脈で,QT間隔は正常である.運動,イソプロテレ
ノール静注などで心室期外収縮が徐々に増加し,多形性もしくは二方向性心室頻拍が出現し,非常に速い多形性心室頻拍(350~ 400/分)となり,さらに心
室細動に移行する. 近年, リアノジン受容体(RyR2)206)-215)やcalsequestrin 2(CASQ2)216),217)の遺伝子変異が発見されている.
運動誘発性の多形性心室頻拍や失神,または若年者の突然死のみられた8家系の81人(男性39人,女性42人)で,6種類のRyR2変異が確認され,
43人のfamily memberがcarrierであった212).この43例中,28人(65%)に運動誘発性の不整脈があり,1 人は経過中に突然死し,19人に幼少時の運動中
や興奮時の突然死の家族歴がみられている.CPVTのRyR2の変異carrierは男性に多く,かつ運動誘発性の心室性不整脈の発症年齢が若く,突然死のリ
スクは高い(4.2倍).女性でもRyR2変異例では心イベントのリスクが高く,発症も早い傾向がある211).RyR2変異が見つかった症例の予後は悪く,
CPVTの遺伝子検査は,突然死の予知と予防の点からの価値は高い.徐脈以外に,心房細動,心房粗動,洞機能不全など上室性不整脈の合併も報告され
ている456),457).
心室細動や多形性心室頻拍が記録された例では二次予防を行う169).家族歴や失神の既往があれば,一次予防としてICDの適応となる.薬剤はβ遮断薬
が主で,効果が不十分な場合にはベラパミルなどのCa拮抗薬の併用が有効なこともある458).フレカイニドの有効例も報告されている459).頻拍の停止には,
ATP460),ベラパミルが有効である.これらの薬物治療に加え,厳重な運動制限が必要である461).RyR2変異のある男性例,CASQ2 遺伝子異常例では早
期のICDによる一次予防が勧められる211).しかし,ICDでも突然死を防ぐことはできなかった症例も報告されており,適応は慎重に決定する必要がある462).
また,左星状神経節切除術も有効性が報告されている463)(表14).肺静脈隔離術も心房細動の合併例では有用である464).