催不整脈性右室心筋症(または異形成)は右室の脂肪浸潤と右室起源の心室頻拍を来たす原因不明の疾患で405)-407),脂肪浸潤はしばしば左室に及
ぶ408).40~50歳台で右心不全症候もみられるようになる409).欧米では,35歳以前の突然死や心停止では本症が重要視されている149),182)-185),410).
我が国では持続性心室頻拍の原疾患全体の約10%を占める11),411).正確な頻度は不明であるが,1/5000人とされ,若年の男性が圧倒的に多い.
持続性心室頻拍の発症年齢は40~50歳で412),病変は徐々に進行する.一部にリアノジン受容体の遺伝子異常が報告されている206),413).
広範な右室壁運動の異常例では,心停止や持続性心室頻拍再発の危険が高い407),412).電気生理検査で心室頻拍が誘発される例,病変が左室に及ぶ
例などで不整脈事故が多い150),412).広範な病変を示す例では電気生理検査で広い領域に病的心筋(低振幅や分裂を示す電位が記録される)が確認さ
れ,しばしば複数波形(4 ~ 8個またはそれ以上)の単形性心室頻拍が誘発される140),405),408).
ICDの植え込みとなった難治性の心室性頻脈(心停止20例,持続性心室頻拍34例,失神2 例)を伴う例で,1,3,5および7年でのICD非作動率は49%,
30%,26%,26%と減少するが,心室性頻脈の再発率は高い412).我が国のICD植込み例でも,約3年の観察で半数で作動がみられる411).
カテーテルアブレーションもしばしば成功するが,長期成績は不明である.一次予防は,広範な病変を有し持続性心室頻拍が誘発される例や家族歴を有
する例が対象となる(表9).