拡張型心筋症は心筋の脱落と線維化のために収縮不全と心室の拡張を来たす原因不明の疾患で,心不全(約50%)と突然死(30~ 40%)が死因となる
392),393).突然死の多くは心室頻拍ないしVFによるが,高度の徐脈も突然死に関与することがある270).持続性心室頻拍例全体の原疾患に占めるDCMの
割合は10%弱で,予後も不良である394).二次予防にはICDを含めた治療を行う.単形性持続性心室頻拍の一部には,カテーテルアブレーションで処置でき
る例もある.
ホルター心電図でDCMの90%以上に心室期外収縮を,45~ 87%に非持続性心室頻拍を認めるが395),396),ほとんどが無症候性である.非持続性心室
頻拍を認める例で死亡率が高いが396),これが突然死の独立した危険因子であるかどうかは議論がある395)-397).
多変量解析で突然死の危険因子として,持続性心室頻拍,心室細動の既往および左室駆出率が有意な指標として残った398).非持続性心室頻拍のみで
は不整脈事故が増加する傾向(相対危険度1.7)を示し,NSVTがあり左室駆出率30%未満となると,両者を認めない群に比べ不整脈事故は8 倍増加すると
される.したがって,心機能低下例に限れば非持続性心室頻拍は,突然死の危険の層別化に有用であると思われる.しかし,DCMの高度心機能低下例で
は,非持続性心室頻拍が認められなくとも突然死が発生することから,陰性的中率は高くない.
ICDの植込み例でみると,左室駆出率の低下(≦30%)で不整脈発生が多い399).左室駆出率≦36%で,非持続性心室頻拍または頻発する心室期外収
縮例では,ICDによる突然死の一次予防効果が認められている281),282).β受容体に対する抗体と不整脈や突然死の関係も認められている400).
DCMでは左脚ブロックが合併すると総死亡率も突然死も増加する260).体表面加算平均心電図での遅延電位(LP)陰性例に比べ,陽性例では持続性心室
頻拍や突然死がみられる401).TWAが不整脈事故予知において有用かどうかは,肯定する報告と否定する報告がある102),103),402)-404).現状では,
一次予防の治療の選択と適応は,症状,心機能,持続性心室頻拍や心室細動の誘発性などを考慮して決定する11)(表8).心機能低下は,我が国では左
室駆出率≦ 40%とすることが多い.