6 心肥大を伴うその他の心疾患
左室肥大は高血圧,大動脈弁狭窄,スポーツなどの負荷に対する適応機序であるが,左室肥大を有する例では突然死,不整脈,心不全,心筋梗塞,脳卒中などの心血管事故は増加する377)-379).
高血圧症では,左室肥大があると突然死が多くなることが示されているが,その頻度は報告者により異なる14),384)-383).左室肥大そのものが突然死のリスクを増加させるか否かは不明で,左室肥大に不整脈385)-388),冠動脈疾患380),381),あるいは心不全389),390)が合併すると突然死は高率となると推測されている.
長期間の高度の運動トレーニングは左室拡大や壁の肥厚を来たし,スポーツ心と呼ばれている391).心電図では左室肥大,Q波,ST-T波の変化がみられ,種々の不整脈を合併する.しかし,これらが生理的な変化であれば,突然死の危険はないとされている391).臨床的には,これらの変化が生理的範囲のものか,心筋症や虚血性心臓病など病的変化を合併しているかの鑑別が重要で,生理的変化の範囲として一般的に左室壁厚は12mm以下,左室拡張末期径は60mm以下とされている340),391).大動脈弁狭窄症については後述する.持続性心室頻拍や心室細動があればICDによる二次予防を行うが,一次予防の成績はない.
心臓突然死の予知と予防法のガイドライン(2010年改訂版)
Guidelines for Risks and Prevention of Sudden Cardiac Death(JCS 2010)