3 カテコラミン誘発性心室頻拍(CPVT)
 運動や精神的興奮あるいはカテコラミンによって心室頻拍や心室細動が誘発されるCPVTや,家族性の多形性心室頻拍(FPVT)および催不整脈性右室心筋症(ARVD)の3 疾患において,RyR2の変異が見つかっている206)-215).異常はFKBP12.6 結合領域に集中している.RyR2の変異によりFKBPとの結合能は低下するためSRからのCa2+の放出が亢進し,細胞内Ca2+濃度の上昇がもたらされ,その結果,異常自動能による不整脈が発生すると考えられる.Calsequestrin 2 遺伝子(CASQ2)にもいくつかの変異が報告され,同様の機序で不整脈を来たすと考えられる216),217).ARVDは常染色体優性遺伝で,RyR2のFKBP12.6 との結合ドメインまたは細胞内ドメインに異常が見つかっている207).いずれも悪性高熱にみられるRyR1の変異部位に相当している.

 PrioriらはCPVTを呈する12例中の4例(33 %) にhRyR2変異を見出した208).さらに運動あるいは精神的ストレス時に多形性心室頻拍を認めた30人の患者(probands)とその家族(family members)118人の検索を行い,RyR2の変異をprobands 14 人(36%),family members 9人(7.6%)に認め,後者のうち4人はsilent carrierであった211)
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心臓突然死の予知と予防法のガイドライン(2010年改訂版)
Guidelines for Risks and Prevention of Sudden Cardiac Death(JCS 2010)