4 QT 短縮症候群
QT短縮症候群(SQTS)は,(1)12誘導心電図上QT時間の著明な短縮を認め,(2)VFによる突然死を生じ,(3)突然死の家族歴を有する疾患である.基礎心疾患を認めず,AFを高率(70%,9/13)に合併することが報告されている218).家族歴を有しない孤発例や,AFのみを呈する症例もある.本疾患の最初の報告は2000年Gussakらで,家族性心房細動の症例,および孤発性のVF症例を報告した219).この報告ではQT時間225msと著明に短い症例が報告されているが,続いて報告された研究ではGaitaらがQTc < 300ms220),GiustettoらはQTc< 340ms221),最近の報告としてはAntzelevitchらがQTc< 360ms(男性),QTc < 370ms(女性)を用いて症例を検討している222).これまでQT短縮の明確な定義はなされていないが,QT時間の正常下限を330ms(小児では310ms),QTc を360~ 380msとすることが提案され,また健常人の99%は男性がQTc > 360ms,女性がQTc> 370msを示すことが報告されていることより223)-226),それ以下を異常としてスクリーニングするのが妥当である.近年,3つのカリウムチャネル遺伝子の異なる変異がSQTS症例に同定され,疾患との関連が示されている.すなわち,SQT1(KCNH2),SQT2(KCNQ1),SQT3(KCNJ2)である227)-229).機能解析ではgain-of-functionを認め,逆にこれらのチャネルのloss-of-functionを来たす変異では,それぞれLQT2,LQT1,LQT7(Andersen症候群)が発症する.
〈有用度〉
クラスⅡ a
●LQTSのチャネル領域の変異(特にLQT1,LQT2,LQT3)
クラスⅡb
●カテコラミン誘発性多形性心室頻拍でのリアノジン受容体またはCASQの遺伝子異常
心臓突然死の予知と予防法のガイドライン(2010年改訂版)
Guidelines for Risks and Prevention of Sudden Cardiac Death(JCS 2010)