1 QT 延長症候群(LQTS)
 LQTS関連遺伝子の異常として12(LQT1-12)報告されているが,このうち,LQT1,2,3の順に多く,この3型で大部分を占める187)-189).LQT1は遅延整流Kチャネルの遅いkineticを示すチャネル蛋白(Iks)のαサブユニットを,LQT2は遅延整流Kチャネルの速いkineticを示す(IKr)のαサブユニットをコードしている.LQT3はSCN5A遺伝子であるNa チャネルのαサブユニットをコードしている.LQT5とLQT6はKCNE1とKCNE2遺伝子で,遅延整流Kチャネルのβサブユニットをコードする.まれにAndersen症候群もQT延長を示し,KCNJ2遺伝子が内向き整流Kチャネル(IK1)をコードする.Jervell and Lange-Nielsen症候群は,LQT1とLQT5変異のホモ接合体による.遺伝子異常の頻度は,2000人に1 人とされるが,浸透率が低いため臨床的に症状を有するものの頻度はこれよりも低い190)

 遺伝子異常は診断の確定に有用である以外,心イベント発生の特徴191)-193), 治療法の選択などに役立つ194)-197).また,LQT2では孔(pore)領域のミスセンス変異を持つ群の方が,その他の領域に変異を持つ群より心イベントの発生率が高く198),LQT1では膜ドメインの変異例の方がC末端における変異例よりも不整脈事故や交感神経活動に鋭敏に反応する199).遺伝子異常部位が臨床像および予後に関連する.
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心臓突然死の予知と予防法のガイドライン(2010年改訂版)
Guidelines for Risks and Prevention of Sudden Cardiac Death(JCS 2010)