2 心筋症における検討
 虚血性心疾患に比べると,心筋症においては心拍変動と突然死や重症不整脈との関連性に関する検討は十分には進んでいない.Karcz Mら64)は,拡張型心筋症69例においてSDNN80msec 未満の群の1 年間の無事故率は35%で,SDNN80msec 以上の群の89%に比して有意に低かったと報告している.またHoffmanらは,拡張型心筋症で不整脈事故を認めた群ではSDANNとpNN50(隣接するNN間隔の差が50msを超える比率)が低下している傾向があったという65).一方,Fauchierら66)は,平均RR間隔,SDNN,RMSSD(隣接するNN間隔の差の二乗平均値の平方根,正常値:27± 15msec)などの指標は拡張型心筋症患者で有意に低下しているが,SDNN100msec未満の群と100msec以上の群で,突然死には差がなかったと述べている.肥大型心筋症患者においても心拍変動の低下が報告されているが67)-70),突然死の予知指標としての心拍変動の有用性は明らかではない.

〈有用度〉

クラスⅡa
 ●心筋梗塞後における突然死の予知
クラスⅡb
 ●心筋症における突然死の予知
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心臓突然死の予知と予防法のガイドライン(2010年改訂版)
Guidelines for Risks and Prevention of Sudden Cardiac Death(JCS 2010)