治療目的/所見クラスⅠ クラスⅡa クラスⅡb
二次予防
◦ SVT,VF または心停止ICD
2 僧帽弁逸脱症
僧帽弁尖の左房への逸脱と弁の肥厚を呈する原因不明の疾患である.僧帽弁逆流と心内膜炎以外に,心臓突然死を生じることで知られている495).有病率は人口の約2~ 5%と考えられている496)-498).以前は,原因不明の突然死例の剖検所見で唯一の異常が僧帽弁逸脱だったことから,本症が注目された499),500).しかし,高度の僧帽弁逆流のために心不全を合併した例では突然死がしばしば認められるが,僧帽弁逆流を伴わない例での突然死は極めてまれであることが判明した501),502).また,僧帽弁逆流を伴う例は伴わない例に比べて突然死の発生頻度が50~ 100倍高く,年間死亡率は1.8 % と推測されている502),503).僧帽弁逆流例では心不全とともに心室性不整脈が高頻度に認められるが504)-508),これらの不整脈の有無で突然死の危険の予知はできない508).
QT dispersionや電気生理検査による心室性不整脈の誘発も,突然死の予知に有用とはいえない.僧帽弁逆流の有無が突然死の発生頻度に大きく関係するが,心エコー検査の意義は十分検討されていない.持続性心室頻拍や心室細動例では二次予防にICDを用いる(表16).
表16 僧帽弁逸脱症における突然死予防
心臓突然死の予知と予防法のガイドライン(2010年改訂版)
Guidelines for Risks and Prevention of Sudden Cardiac Death(JCS 2010)