3 人工弁置換例
 人工弁置換術後遠隔期では,St. Jude Medical 弁装着患者における突然死の頻度は0.5~ 2.4%と報告されている509),510).しかし,他の機械弁であるMedtronic-Hall弁装着患者の突然死例の剖検所見から,突然死の原因の大半が冠動脈疾患や左心機能不全によるものとされている511).実際,重症冠動脈疾患や左室機能低下例で有意に突然死率が高い.また,人工弁関連死の検討では,大動脈弁狭窄症や小サイズ人工弁の使用などが危険因子として挙げられている512).機械弁装着患者の突然死には,従来考えられていた血栓弁,塞栓症やディスク逸脱よりも心不全,心筋梗塞,あるいは致死性不整脈がかかわっている可能性が高い.生体弁による置換術後では突然死の発生率は0.2~ 1.0%と低い513)

 人工弁装着例では,人工弁機能不全の予知も重要で,血栓弁の早期診断には,弁の開放音や閉鎖音の周波数解析514),X線シネ撮影による人工弁ディスクの開放角の計測515)などの評価が有用である.しかし,弁の機能不全と不整脈死の関係は不明である.
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心臓突然死の予知と予防法のガイドライン(2010年改訂版)
Guidelines for Risks and Prevention of Sudden Cardiac Death(JCS 2010)