治療目的/所見クラスⅠ クラスⅡa クラスⅡb
二次予防
 ◦SVT またはVF ICD,狭窄弁の手術
一次予防
 ◦心室不整脈があり,SVTまたはVF が誘発される狭窄弁の手術アミオダロン
 ◦重症弁狭窄狭窄弁の手術
1 大動脈弁狭窄症
 大動脈弁狭窄症は心臓弁膜症の中で最も突然死を来たす疾患で,成人(平均年齢60歳)の15~ 20%に突然死がみられる478).また,死亡例70例中44
例は突然死であったという報告もある479),480)

 Schwartzら479)は,連続心電図モニターにて失神の既往のある大動脈弁狭窄症9例のうち7例で,失神中に心室頻拍あるいは心室細動を観察している.
また,Olshausenら480)のホルター心電図記録中に突然死した61例のうち7例は重症大動脈弁狭窄症を伴い,7 例中6例に単形性心室頻拍(2例),
多形性心室頻拍(2例),またはTdP(2例)を認めた.突然死の原因は,心室細動や持続性心室頻拍と考えられ,その背景に圧負荷に伴って生じる左室肥
大,心筋線維化および心筋虚血が重要な役割を担っていると思われる.持続性心室頻拍や心室細動例(心肺蘇生例)では,ICDを中心に二次予防を行う.
血行動態的に有意な弁狭窄は手術の適応とする(表15)

 突然死の危険因子として,胸痛,心不全症状および失神がある.自覚症状が出現すると8 ~ 34%に突然死がみられるのに対して481),482)
無症状患者では0 ~ 5%にしかみられない483),484).安静時の失神には心室頻脈が479),労作時の失神にはBezold-Jarisch reflexの関与が考えられてい
485).大動脈弁圧較差は弁狭窄の重症度判定に有効であるが,突然死予知には有用でないと考えられる.

 ホルター心電図により不整脈がしばしば観察されるが,これらは圧較差や逆流の程度と相関せず,心室中隔の壁厚や左室重量および左室駆出率の低下
度と相関している486)-489)

 大動脈弁狭窄症の2/3の症例でQT dispersionの増大がみられ,70msec以上の増大例は失神や心停止の危険が高い44),45).大動脈弁狭窄症ではLP
陽性率が有意に高いが490),LPによる突然死の予知はできない491),492)

 術後に大動脈弁の圧較差が消失すれば,自覚症状の改善が得られるが,手術後遠隔期死亡は8~ 44%にみられ,死因に致死性不整脈や心不全が推
測されている493).術前の重症心不全例や術後左室収縮能の改善が得られないか,さらに悪化する例では術後死亡の危険がある494).一次予防としての
ICDの有用性は検討されていない.
表15 大動脈弁狭窄症における突然死予防
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心臓突然死の予知と予防法のガイドライン(2010年改訂版)
Guidelines for Risks and Prevention of Sudden Cardiac Death(JCS 2010)