運動負荷試験は,(1)冠動脈疾患の診断と予後評価,(2)心不全例における運動機能評価,(3)薬剤やペースメーカ治療の評価,(4)不整脈などの特異
的疾患の予後の評価を目的に実施される166)-168).
本ガイドラインでは,冠動脈疾患の診断は省略する169),170).予後評価については,虚血性心臓病における突然死予防の項で述べられる.
肥大型心筋症では,運動負荷により収縮期血圧が低下する例や,20mmHg以上上昇しない中年―若年者では突然死の危険が増す171)-175).
運動によって心室性不整脈が誘発されるかどうかは,診断およびその治療効果判定の面で意義がある176)-179).不整脈疾患では,カテコラミン誘発性多
形性心室頻拍180),QT延長症候群181),催不整脈性右室心筋症149),182)-184)などに運動負荷試験の意義があると考えられるが,突然死予知を目的とした
一定の運動負荷試験法はまだ確立されていない185),186).
器質的心疾患を基礎とする持続性心室頻拍や心室細動例,あるいは原因不明の失神例や心停止蘇生例で持続性心室頻拍が誘発される例では,
運動負荷試験をホルター心電図に併用して有効薬剤の選択に用いられる.
〈有用度〉
クラス 1
●冠疾患が疑われる例での心室頻脈の誘発
●運動誘発性心室性不整脈例またはそれが疑われる例
●肥大型心筋症における血圧の異常反応
クラスⅡ a
運動誘発性心室性不整脈での薬物またはカテーテルアブレーションへの反応の評価
クラスⅡb
●冠疾患の可能性の低い心室不整脈を有する例
●中年以降の心室期外収縮の評価