TWAとは,形の異なるT波が1拍ごとに交互に現れる現象であり,再分極異常を反映する.今日,突然死の予知に主に使用されているのは運動負荷中に
スペクトル解析で検出されたマイクロボルト(μV)レベルのTWAであるが,最近ではホルター心電図あるいは運動負荷心電図を用いて簡易に時系列解析で
TWAを検出する装置も出されている.多くのエビデンスが出されているのは,スペクトル解析で検出されたTWAである.
TWAは,心筋梗塞後,心機能の低下した虚血性心筋症,拡張型心筋症,心不全などの心疾患を有する患者において有用であることが複数の前向き試験
あるいはメタ解析で示されている98).突然死の予知において,TWAは非侵襲的指標でありながら侵襲的な心臓電気生理検査と同等の予測精度を有する
99).日本心電学会の体表微小電位基準委員会が中心となって,予知指標としてのTWAの有用性を評価している.心筋梗塞後の患者においては心機能の
程度にかかわらず,心臓死および不整脈イベントの予知に有用であることが示されている100),101).TWAの突然死の予知指標としての特徴は,陰性的中率
が極めて高いことである.
低心機能患者(虚血性・非虚血性心筋症)に限定した欧米の臨床試験として,ALPHA102),MASTER103),ABCD試験104)がある.いずれの試験もTWAは
総死亡,あるいは心臓死の予知において有用であった.しかし,不整脈イベントの予知においては結果が異なっていた.MASTER試験(ICD作動で評価)は
不整脈イベントの予知に対する有用性を否定する内容であり,ALPHA試験やABCD試験は支持する内容であった(ABCD試験では心臓電気生理検査と併
用することの重要性を強調).我が国にも低心機能患者に限定してTWAの有用性を評価した臨床試験(PPREVENT-SCD)がある.同様にTWAの有用性を
示す結果であったが,持続性不整脈の頻発や運動負荷不耐などで検査に対して不適応となることが多いことを問題点として挙げている.肥大型心筋症,
失神患者群,Brugada症候群,特発性心室頻拍については有用とする報告があるが,いずれも前向き研究ではなくエビデンスレベルとしては低い.
〈有用度〉
クラスⅡa
●心筋梗塞後あるいは心機能の低下した虚血性心筋症での心臓突然死の予知
クラスⅡb
●拡張型(非虚血性)心筋症あるいは心不全での心臓突然死の予知