小児期HCMは小児の突然死の中で最も重要な位置を占め,内外に多くの報告がある183)-185),335),576)-586).
14~ 30歳(174例)で非持続性心室頻拍(3 連発以上でレートは120b/分以上)を有すると,突然死は26例中6 名で発生し,これは非持続性心室頻拍のな
い群の4.35倍に相当する356).
18歳未満の小児期HCM 99例でみると,平均4.8年の観察期間中に19例に突然死または蘇生された突然死ニアミスがみられ,心室頻拍があると危険は
3.75倍高い581).14~ 30歳のHCM患者174例では,左室壁厚が30mm以上あると,突然死は増加する(3.5倍)356).66例のHCM患児の観察(19歳未満,
初診時年齢6 歳,観察期間12年)でも,突然死は心室中隔厚または左室後壁厚と相関する582).QTc dispersionの増大(≧20msec)や,冠動脈造影での
左冠動脈前下行枝のmyocardial bridgingも突然死を増加させる581).心不全が発症すると突然死は増加するが580),582),3 歳未満の発症では特にその危
険は高い578).
高用量β遮断薬治療(5~ 23mg/kg/日)を受けた26名からの死亡はなく,無治療または通常量のβ遮断薬(0.8~ 4mg/kg/日)あるいはベラパミル投与例で
は,140例中の9名が死亡し,高用量β遮断薬治療群の予後はよいとされるが582), 否定的な見解も出されている334).
救命された突然死ニアミス,失神,症状を伴った心室頻拍の既往,あるいは一親等以内の家族の突然死については,小児においてもICD植え込みが行わ
れるようになっている227),474).その適応基準については,各施設の基準やACC/AHA/NASPEの勧告11),230)に準じている.今後,小児期HCM患児に対し
てエビデンスに基づく適応基準を作成する必要がある.
小児では中隔心筋切除術,ペースメーカ植込み術,中隔枝塞栓術などの施行例は少なく,二次予防としてこれらが有効かどうかは不明である.
特に中隔枝塞栓術は,心筋壊死の瘢痕による新たな不整脈出現の危険があり,現時点では小児には推奨できない33),335).
薬物治療は一次予防,二次予防としても推奨される.β遮断薬,Ca拮抗薬,ジソピラミド(またはシベンゾリン)が使用されている334),335).
β遮断薬の小児投与量は2mg/kg/日が一般的な量と考えられており,高用量のβ遮断薬治療(5~ 23mg/kg/日)の使用例の報告は少なく510),
否定的な見解が出されている334).小児期における特徴は,乳幼児期発症例ほど心不全を合併しやすく予後も悪い574),583).
このような例では心不全治療が主になることがある.小児期HCMの心臓突然死予防については,我が国のガイドラインによった(表22)334).