先天性心疾患で手術を受けた患者の突然死が問題になっている563),564).基礎疾患としてはファロー四徴症と完全大血管転位が多い564)-569).
世界的な多施設研究では,登録時の幅広いQRS間隔と手術時年齢が心臓突然死の危険因子となっている564).また,幅広いQRS間隔とその経時的な
QRS幅の増加も突然死に関係する564).
術式では,transannular patchの使用は非使用例に比し突然死のリスクが高く, 全死亡率も高い566). 逆にoutflow tract patchを用いない例では突然死
は少ない567).ファロー四徴症術後の突然死例の検討から,突然死群では,(1)中等度から重症の肺動脈弁逆流,(2)心室頻拍の既往,(3)QRS幅≧
180msec,(4)左室駆出率40%未満,などが危険因子として挙げられる565).術直後に3日間以上持続する完全房室ブロックも,突然死の危険因子になる
569).我が国の共同研究では突然死の頻度は欧米の報告に比して少ないが,その中で心室頻拍の危険因子として,QRS幅(> 120msec),術後の経過年
数が,また完全房室ブロックの危険因子として膜様部周囲の心室中隔欠損が挙げられている570).さらにこの共同研究では,transannular patchと突然死の
原因になり得る不整脈とは関連がないことが示され,諸外国の結果との違いは手術手技の違いによるとコメントされている.チアノーゼ性心疾患に限ると,
15歳時の血小板減少(< 130×109/L)は突然死を含めた死亡の独立した予測因子になっている571).
失神,症状を伴った心室頻拍,救命された突然死ニアミスでは,二次予防としてICD植え込みの報告が増えているが543)-547),572),多施設からのデータは
少ない573).基礎疾患としてはファロー四徴症と完全大血管転位が多い(小児の心室頻拍の項参照).
先天性心疾患患児におけるICD植え込みの基準はまだないため,成人における基礎心疾患を持ったハイリスク群の勧告11),230),574)に準じて行われてい
る.小児例においては,成長や過度の運動に伴うリード断線などの問題が21~ 25%と高率に生じている544),545).今後,ICDに関して多施設での共同研究
が必要である.一次予防としてICDの植え込みが行われた報告545),578)もあるが,まだ例数は少ない.残存病変の治療も重要である575).