治療目的/所見クラスⅠ クラスⅡa クラスⅡb
二次予防
 ◦蘇生例胸部を打撲し得る運動の禁止
胸部のプロテクター着用
軟らかいボールを使用
一次予防胸部のプロテクター着用
軟らかいボールを使用
3 心臓震盪(Commotio Cordis)
 運動選手が胸に比較的弱い機械的打撲を受けた後に急死する現象が注目されるようになり,心臓震盪と呼ばれる555),556).心臓震盪の死因は胸部の鈍的外傷により発生する不整脈と考えられている.これは,実験的にいわゆる心室の受攻期に鈍的打撲を与えると心室細動が発生することや,QRS波のタイミングで打撲を与えると一過性の完全房室ブロックが発生することから推定されている557),558).近年,KATPチャネルが心室細動の発症に関与するとの報告がなされている559)

 スポーツの種類としては野球,ソフトボール,アイスホッケーが多いが,これ以外にフットボール,サッカー,ラグビー,ラクロス,ボクシング,膝げり,空手,拳や手で胸を突いたときにも発生することが知られている556),558)

 処置は,できるだけ早期に心肺蘇生を開始することが重要であるが,救命率は10%位といわれている.胸部叩打は心室細動には無効で,心停止には有効であるとの報告がある560).予防としては,胸部のプロテクターが用いられているが561),心臓震盪での死亡例の28%がプロテクターを着けていたとの報告もあり558),さらなる安全策が必要である562)(表21)
表21 心臓震盪における突然死予防
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心臓突然死の予知と予防法のガイドライン(2010年改訂版)
Guidelines for Risks and Prevention of Sudden Cardiac Death(JCS 2010)