改訂にあたって
突然死は「急性の症状が発症した後,1時間以内に突然意識喪失を来たす心臓に起因する内因死」と定義される1).基礎疾患はあってもなくともよく,発症の仕方も時期も予測できない突然の死亡である.
突然死を回避するためには,それを予知し予防手段を講じればよいことになる.突然死の多くは不整脈死であることから,本ガイドラインでは不整脈死を来たしやすい病態または臨床所見を予知因子として取り上げ,それらの予知因子を有する場合,予防のためにどのような治療法を選択するかを論じた.とりわけ不整脈死では心室頻拍や心室細動の役割が大であり,これらに対する植込み型除細動器(ICD)の有用性が証明されていることから,致死性の心室頻脈の治療のためにICDの適応をどうするかを中心に論じた.著明な徐脈や心静止も突然死の原因になるが,これらは関連する病態や疾患とのかかわりの中で随時論じた.関連の不整脈の非薬物治療や薬物治療のガイドラインも改訂作業が進んでおり,それらとの整合性も図りつつ部分改訂を行った.
不整脈死を予知するための病態や疾患の評価には,循環器専門医の知識が要求されること,および予防の中心となるICD治療は循環器専門医によってなされることから,本ガイドラインは循環器専門医を主たる対象とした.
突然死に不整脈がかかわりその蘇生の成否は極めて重要で,幸い蘇生に成功した例では再発防止のための適切な治療が必須である.そこで,救急医療に携わる医師をはじめ,第一線で診療に当たる医師にも本書が役立てば幸いである.
心臓突然死の予知と予防法のガイドライン(2010年改訂版)
Guidelines for Risks and Prevention of Sudden Cardiac Death(JCS 2010)