米国では年間30万人から40万人が突然死するとされ,その原疾患は圧倒的に虚血性心臓病が多く,虚血性心臓病以外の原因は5~ 10%とされている1),
2).血行動態が破綻した例では,早期の心電図で心室細動が75~ 80%に認められるとされている.ホルター心電図中の死亡を報告した論文から157例を集
計分析したBayesらの報告では,心室頻拍(VT)または心室細動(VF)は83%に,残り17%は心静止を認めた3).
我が国では突然死の発症数は,年間およそ5万人と推定されている4)-6).突然死の原疾患について,東京都7)や佐久地域8)での剖検データをみると,
虚血性心臓病(主に心筋梗塞),高血圧,弁膜症,特発性心筋症,心筋炎,心サルコイドーシス,原因不明の突然死(青壮年突然死症候群,乳幼児突然死
症候群),肺梗塞,大動脈瘤,肺炎,脳血管疾患など多彩である.ホルター心電図中の突然死例では,頻脈を75%以上に認めている9),10).
一方,器質的心疾患に伴う持続性心室頻拍はしばしば致死的で,不整脈死を来たす危険が高い.その原疾患も,米国では80%以上は虚血性心臓病
(=陳旧性心筋梗塞)であるが,我が国では(図1)虚血性心臓病は約30%を占めるにすぎず,心筋症,催不整脈性右室異形成(右室心筋症),心臓手術後
例,心サルコイドーシスなどに加え,Brugada症候群,QT延長症候群およびカテコラミン感受性多形性心室頻拍など,プライマリー不整脈疾患が含まれる
11).
このように,不整脈死の背景は我が国と欧米とは差があると思われるが,最近,自動体外式除細動器(AED)で救命された心室細動例は急性心筋梗塞に
よるものが多く,これまでの病院に到着して診断された持続性心室頻拍例とは病態が異なる可能性がある.